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ガールズ&パンツァー 説明します! (大砲編)

戦車と言えば大砲というイメージがありますが、初期の戦車には機関銃しかない物があったり、大砲があっても車輪で走る場合は装甲車と呼ばれるなど、大砲は戦車の絶対条件ではありません。
でもまあ、戦車の魅力と言ったら大砲なので(かく言う自分が88ミリ砲ファン)大砲について初心者向けに語らせていただきます。
あくまでも初心者向けなので、戦車談義できる方からしたらお笑いものでしょうけど、そこはご理解ください。

大砲とは火薬の燃焼圧力で物体を飛ばす武器です。
古くは石を、その後は鋳物の鉄球(砲丸)を飛ばしました。

ここで脇道。
陸上競技にある砲丸投げは、文字通り大砲の弾である砲丸を投げて力自慢をしたことが発祥です。
一般男子は16ポンド(7.26キロ)の砲丸を投げます。
聞き覚えがある単位が出てきましたね?

みほ「今のは?」
優花里「ファイヤフライ、17ポンド砲です」

イギリス軍は昔からの単位、砲丸の重さで大砲を分類していたのです。
マチルダ2歩兵戦車の40ミリの2ポンド砲、クルセイダー巡航戦車は57ミリの6ポンド砲を搭載していました。17ポンド砲は76.2ミリになります。
他国は全部弾頭の直径で大砲を分類しました。ドイツだけがセンチ単位で他はミリ単位です。
だから有名な88ミリ砲は正式には8.8センチ砲なのです。


球型から釣り鐘型へと弾頭が進化した際、砲身の内側にらせん状の溝が刻まれるようになりました。弾頭がこの溝によって回転を与えられると飛行姿勢が安定して、命中精度があがります。この溝をライフリングと呼びます。ライフル銃の語源です。

大砲は弾頭の直径が大きいほど威力があります。

榴弾は中に詰める爆薬が増えますし、徹甲弾は重くなるほど運動エネルギーが増して貫通力が上がるからです。

なら戦車に積む大砲は大きければ大きい方がいいじゃないか。

とはならないのです。
なにしろ大きな大砲は重くなります。砲身だけでなく支える砲架も大型になります。
装甲だけでも重い戦車がさらに重くなれば、速度は落ちるしサスペンションも故障しやすくなります。ティーガー1が最後まで足回りの故障に悩まされたように。
重くなると砲身を上下させる歯車に負担がかかります。128ミリ砲を搭載したヤークトティーガーは、砲身支えなしで動くとすぐ歯車が摩耗して命中制度が低下する、ある意味ポルシェティーガー以上の失敗兵器です。
重い大砲を乗せれば砲塔を回転させるのにもより力が必要となります。
上下左右に動かすのが大変な大型の大砲は、迅速さが求められる戦車戦では不利なのです。
それに大きな大砲を乗せると車内が狭くなって砲弾の積載数が減ります。ソ連の122ミリ砲搭載JS2重戦車はたった28発しか積めませんでした。
さらに重い砲弾は装填が大変です。JS2の砲弾は弾頭だけで25キロ! 薬莢分離式でなんとか装填しました。
作中最大の大砲はKV-2の152ミリ砲で、装填手はふたり必要でした。それでも発射速度は遅いし、砲弾も38発しか積めません。たしかに威力はありました。榴弾なので装甲は貫通できませんが、爆圧で装甲を叩き割ったほどです。でもさすがに取り回しが悪くて、ソ連戦車にしては少数で生産が終わりました。
現用戦車は120ミリが標準で、さらに自衛隊の一〇式戦車などは自動装弾装置を利用しています。
100ミリ以上の砲弾を人力で装填するのは無理があるのです。

大洗女子も砲弾の重さに苦しんでいました。
3突の装填手カエサルが75ミリ砲弾を必死に抱えていたり(3話)、一年生がM3中戦車に75ミリ砲弾を積載するのに四苦八苦していたシーン(5話)がありましたね?
砲弾を部屋に飾るほどの秋山殿だから最大6.8キロもある75ミリ砲弾を素早く装填出来たのですよ。

第二次大戦開戦当時、戦車戦を想定した主力戦車は37~50ミリが標準でした。
大洗女子の場合38tとM3中戦車の砲塔が37ミリ砲、B1bisの砲塔が47ミリ砲です。同時期に開発された聖グロリアーナのマチルダ2が40ミリ砲です。
主力戦車は運動エネルギーで相手の装甲を貫通し、内部で跳ね回る徹甲弾が主に使われました。運動エネルギーは重さと速度で決まるので、直径は小さくとも高速な弾頭を撃つことができる長砲身の大砲が選ばれたのです。

一方の支援戦車は最大75ミリの榴弾砲が主流でした。
大洗女子の4号、M3とB1bisの車体砲など支援用の大砲は75ミリ短砲身です。
なぜ短砲身?
砲身が長くて初速が速い方が射程も伸びますし、命中精度もあがります。
でも支援戦車は榴弾で陣地や対戦車砲を攻撃するのが主任務です。爆風や破片で敵兵を殺傷する榴弾の威力は弾頭に詰められた爆薬の量で決まるので、命中するだけの速度があれば十分なのです。
それに戦車で1キロ以上離れた目標を撃つなど、想定されていませんでした。(例外は間接射撃に対応していた4号戦車)交戦距離が数百メートルなら重量を増してまで長砲身にする理由はなかったのです。

支援用戦車なのであんこうチームの4号初期型は戦車戦が苦手です。
聖グロリアーナ戦では、至近距離でチャーチルの砲塔側面に命中させても撃破判定もらえませんでした。
短砲身の75ミリ砲の徹甲弾ではチャーチルはおろか、マチルダ2でさえ撃破はできません。そもそも大洗女子の戦車でまともにマチルダ2を撃破できるのは75ミリ長砲身を搭載した3突だけなのです。
でも4号はマチルダ2を撃破しましたよね?
これは恐らく「成形炸薬弾を使用した」という設定なのでしょう。
爆薬を円錐状に凹ませて爆発させると、中心に爆圧が集中します。さらに円錐の穴を金属でカバーすると、爆発の熱で蒸発した金属が一点に集中して装甲を貫通します。貫通力は約90ミリです。

マチルダの砲塔装甲は75ミリだから、撃破できます。でもチャーチルの砲塔側面93ミリ。ギリギリアウトです。

みほは右側部に回り込んで同じ場所を撃とうとしました。しかしダージリンはそれを察して砲塔を回転、4号の動きにあわせました。ダー様凄い!
長砲身の75ミリ砲なら徹甲弾で十分貫通力があるので、成形炸薬弾は戦車砲にはあまり使用されず、弾頭が回転しないロケット砲(米軍のバズーカ)や使い捨て無反動砲(ドイツ軍のパンツァーファースト)などで使用されました。
4号短砲身に成形炸薬弾が搭載されたのはトーチカ(コンクリートで固めた陣地)を破壊するためで、実戦では戦車への使用は禁じられていました。
成形炸薬弾が有効なのは75ミリ以上の大砲です。57ミリ短砲身の89式はどうあがいてもマチルダ2を撃破できなかったのです。

特殊砲弾が出てきたのでドイツ軍が多用した徹甲榴弾について触れます。
徹甲弾の内部に爆薬を積め、車内で爆発するのが徹甲榴弾です。戦車兵の殺傷力が増し、弾薬や燃料の誘爆も狙えます。ただ爆薬の分弾頭が軽くなるため徹甲弾より貫通力が落ちるという欠点もありました。でもパンターやティーガーなどは元々強力な戦車砲を搭載していたので、問題とはなりませんでした。
一方でイギリス軍は徹甲弾に固執しました。マチルダ2なんて歩兵支援戦車なのに徹甲弾しか用意しませんでした。榴弾がないので対戦車砲に弱く、ことに88ミリ対空砲には無力でした。チャーチルでさえ75ミリ砲を搭載するまで榴弾はなかったのです。こうした徹甲弾至上主義の恩恵を受けたのは敵であるドイツ軍です。戦車が撃破されても搭乗員が生き残る場合が多かったそうです。
反対に連合軍の戦車はドイツ戦車の徹甲榴弾によって派手に爆発するシーンが実写映像で残っています。
パンターやティーガーにとり、脅威となる連合軍戦車はファイヤフライとJSー2くらいで、その数は少数でした。当時のドイツ戦車にとり最大の脅威は連合軍の戦闘爆撃機で、次が歩兵のバズーカ砲だったそうです。

ところで3話の練習試合で3突に撃たれた4号の車体後部に砲弾がめり込んでいたことをお覚えですか?

一部で「カーボンコーティングが徹甲弾を防いだ」との声がありますが、これは間違いです。
めり込んでいたのは徹甲弾ではなく、競技用砲弾なのです。
スタッフコメントでありますように「センサーが組み込まれていて判定システムに信号を送る」のです。
つまり威力が弱かったり(チャーチル)、命中箇所が端で行動不能に該当しない場合(4号)は撃破判定されないのです。

戦車道はスポーツです。だから装甲を貫通する徹甲弾や徹甲榴弾、成形炸薬弾などは使われません。撃破判定の基準として引用されるだけです。
でも高速で物体が激突したり、榴弾の爆発衝撃で装甲の内側が剥離して飛び散ることがあります。
その効果を狙った粘着榴弾という砲弾もあります。装甲にへばりついて爆発、衝撃で裏面を剥離飛散させて戦車兵を殺傷する特殊砲弾です。
そんな危険を防ぐために車内はカーボンコーティングされているわけです。

戦車道は戦争ではありませんから、安全に配慮されているのです。

さて、あんこうチームの4号戦車はプラウダ戦に備えて長砲身に換装しパワーアップします。
砲身が長い方が、長い間加速できるので初速が速くなります。
でもそれには砲身に合わせた砲弾に変えなければなりません。

砲撃の引き金を引くと薬莢の底にある雷管が激発されて火薬に火が着きます。
その燃焼ガスの圧力で弾頭は砲身内で加速されます。
火薬が燃焼し終えるのと同時に弾頭が砲身から飛びだすと、最大の加速を得られます。
つまり砲身の長さにあった砲弾を使わないと威力が出ないのです。
短砲身用の砲弾を長砲身で使うと、弾頭がまだ砲身にあるうちに燃焼が終わってしまい、砲身を出るまで摩擦で弾頭の速度は落ちてしまいます。
逆に長砲身用の砲弾を短砲身で撃つと、火薬の燃焼が終わらないうちに弾頭が砲身から飛び出てしまい、所定の速度を得られません。
88ミリ砲の場合、ティーガー1とティーガー2とでは砲身長が違う(2の方が長い)ので、薬莢の長さからして違います。(これは戦場で混乱しないよう、意図的に変えているのだと思います)

ところで、榴弾の弾頭に詰めるのは「爆薬」で、薬莢に詰めて弾頭を打ち出すのは「火薬」と表現していることに気づきましたか?
燃焼速度により爆薬と火薬とで区分されます。
爆薬は瞬時に燃焼します。これがいわゆる爆発です。
火薬は砲身長に合わせて燃焼速度をコントロールし、最適な加速を弾頭に与えることが目的です。
そのため当時の火薬はスパゲッティみたいに細長く、束になって薬莢に詰められていました。
弾頭が砲身を通過する時間に合わせて調節されていたのです。
これが整っていないと初速はバラバラになり、命中精度など期待できません。
長砲身の戦車砲を活かすには、砲弾や砲身の品質といった工業力が必要なのです。

同じ75ミリ長砲身でも、M4中戦車と4号戦車、パンターとでは長さが違います。
それぞれの戦車砲は正式には下記のように表記します。
M4中戦車:37.5口径75ミリ
4号F2型:43口径75ミリ
パンター:70口径75ミリ
大砲の長さは砲身と薬室(薬莢が収まる場所)を合わせた長さが「弾頭の直径×口径」で計算できます。
M4中戦車の場合は「75×37.5=2812.5ミリ」約2.8メートルです。
ドイツだけは砲身と薬室に加え砲尾までの長さも含めるので、やや大きめの数字となります。
基本的に「長い方が初速が上がるので貫通力がある」と思っていいでしょう。
中には特殊砲弾などで貫通力をあげている場合があります。(ファイヤフライの17ポンド砲)

いくら強力な大砲でも当たらなければ意味がありません。
第二次大戦当時の命中精度がどの程度かと言うと「停止して撃てば静止目標に命中する」くらいです。
舗装された道路は別として、原野は凹凸があって乗り越える度に砲身が上下左右するわけです。自分も動きながら逃げる敵を撃っても当たる物ではありません。
だから聖グロリアーナが走りながら撃(行進間射撃)っても4号に当たらなかったのは、主人公補正ではありません。当時の命中精度はあの程度なのです。
それでも撃ったのは陸上戦艦の思想を聖グロリアーナが踏襲したことと、初心者が相手だからでしょう。現に一発も当ってないのに一年生たちは逃げ出しましたよね? 至近弾でも大砲に撃たれれば恐ろしいものです。未熟な戦車兵に対しては有効な戦術でした。
一流の砲手なら停車状態で移動目標に命中させられます。サンダース戦でフラッグ車を撃破した華さんが好例ですね。
行進間射撃で移動目標に命中させられたのはサンダースのナオミ、プラウダのノンナくらいでしょうか。日本軍でも超一流の砲手は行進間射撃で命中させられたそうです。ナオミとノンナは作中でトップ2の砲手なわけです。

命中精度に大きく影響するのは照準器です。
精度からしたらドイツ、イギリス、アメリカ、ソ連の順です。
開戦時から長砲身の76.2ミリ砲を搭載していたT34ですが、照準器が劣悪(イギリス軍に笑われるレベル)なうえ砲手も練度不足。遠距離では静止目標にすら当てられませんでした。
ソ連軍の対応は単純でした。当たる距離まで接近させたのです。当時のドイツ軍には正面からT34を撃破できる戦車はありませんでした。ドイツ軍にしても側面や後ろに回り込まねばT34は撃破できません。そのため独ソ戦初期は接近戦が多く発生しました。
戦争後半になるとイギリス製照準器のコピーを使うことと、戦車兵の練度があがることでソ連戦車もある程度遠距離戦闘ができるようになりました。でもその頃はドイツ軍の主力はパンターに以降しつつあり、T34/85でも接近しなければ撃破できませんでした。
遠距離の砲撃戦では熟練の戦車兵が減るまでドイツ軍が優勢だったのです。

アメリカのM4中戦車は当時の新技術ジャイロスタビライザーを搭載していて、車体が上下しても砲身が敵を捕らえ続けられました。つまり走行しながらでも(わりと)正確な射撃は可能だったのです。ですが扱いが面倒だとあまり使われませんでした。アリサの「バカでも」発言はある意味正しいのです。
それに移動しながらの砲撃って攻め手の米軍の場合、待ち構えている敵に向かうという状況がほとんどです。4号戦車にさえ負けるM4無印の戦車兵は気の毒でしたね。M4A1は4号戦車を上回る76.2ミリ砲を搭載していましたが、それでもパンターやティーガーを相手にするときは囮を使って誘き寄せ、至近距離から不意打ちするしかなかったんです。
ちなみにファイヤフライの17ポンド砲は規格が合わなくてジャイロスタビライザーは外されていました。だから行進間射撃で命中させられたのはナオミの技量によります。

第二次大戦も後半になると大型の戦車砲が標準になります。
ティーガー2やエレファントに搭載された71口径88ミリ砲なら連合軍のどの戦車も撃破できました。
だからヤークトティーガーや、ましてやマウスのような128ミリ砲搭載戦車が必要だったか疑問です。弾頭だけで28キロですから装填が大変です。ましてや制空権がない当時、巨大戦車は戦闘爆撃機の格好の的です。戦車は上からの攻撃に無防備です。みほが上からマウスを撃破したように。マウスは現実を無視したあだ花と言えましょう。
ソ連のJS2が122ミリ砲を乗せたのは「当初85ミリにするつもりだったけど、ティーガーやっつけられないから」と、85ミリ砲架に乗せられる122ミリ砲が選ばれたのが理由です。威力はありましたよ、正面からティーガー2を撃破できました。でも戦後の主力戦車T54やT55が100ミリ砲だったことを考えれば、明らかにオーバースペックでした。

以上のように大砲は大きければいいという訳ではありません。
用途に合った大砲を搭載するのが一番です。
第二次大戦で最優秀の戦車は、走攻守どれも一流なパンターG型だと個人的に思っています。冷泉殿も認めています。
70口径75ミリ砲は2000メートルの距離から連合軍戦車を撃破できました。
車体の前面装甲は米軍の90ミリ砲にも耐えるほど強靱です。
これに対抗できる戦車はソ連のJS−2だけでした。
つまりパンターは重戦車に匹敵するほどの中戦車だったわけです。

ドイツ軍の長砲身の75ミリ砲や88ミリ砲、チャーチルやJS-2の砲口に飾りみたいな部品が付いていますね?
あれはマズルブレーキと言い、反動により大砲が後退するのを減衰させるのが目的です。弾頭が砲口から出る際、燃焼ガスを後ろに跳ね返して大砲を前に引っ張って反動を減らすのです。
ただこれを使うと燃焼ガスが地面の砂塵を巻き上げるのが欠点で、3突みたいに砲身が低い車両だと視界悪化で難儀したそうです。

つらつらと大砲について語ってみました。
ガルパンを楽しむうえでの一助になれば幸いです。
長文にお付き合いくださいまして、ありがとうございました。

最後に、地元大洗に幸いありますように。

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